Moto3
チャンピオンのゲバラと、初優勝を目指すデニス・オンジュが抜け出してマッチレースになりました。直線の短いコンパクトなレイアウトのバレンシアですから、Moto3クラスといえども大集団にはならないですね。
オンジュが肉薄するも抜けない状況が続きました。いつも上位で戦いながらいまだに優勝が無いオンジュは、今回こそは勝つという気迫にあふれていました。
最終ラップ、ついにオンジュが追い抜きを成功させて首位に立ちますが、最終コーナーでインを抑えるタイトなラインで進入したため出口で大回りし、加速でゲバラに抜き返されてゲバラが優勝。これは悔しい。インを閉めないで普通のラインで入っていれば……もしくは、もう少ししっかり進入スピードを落としていれば……ということにはなりますが、これも勝負のうちですね。
ゲバラはチャンピオン獲得のシーズンを優勝で締めるという最高の最終戦になりました。シーズンオフはさぞやいい気分で過ごせることでしょう。混戦のMoto3で7勝もできるという実力も、今後が楽しみです。
3位は徐々に遅れて単独になったガルシア。
4位集団を佐々木選手が引っ張っていましたが、最後はランキング3位を争うフォッジャに敗れて5位となり、ランキングもそのまま4位が確定しました。
Moto2
小椋選手とアウグスト・フェルナンデスのどちらがチャンピオンになるか決まるレース。
小椋はフェルナンデスに9.5ポイント差の2位。10ポイントの差をつけなければいけなくなりました。小椋が優勝して、フェルナンデスが4位以下なら逆転ということになります。厳しいけれど、展開次第で逆転は十分可能な状況だと思います。
小椋は5番グリッドからスタートで早速フェルナンデスを抜いて4位。FPや予選で好調だったロペスとアコスタが先頭争いをしますが、ロペスがやり過ぎてオーバーランを繰り返し、その隙にアルボリーノと小椋が前に出ます。ロペスはその後、勢い余ってという感じて転倒。小椋が2位、フェルナンデスが4位ということで、小椋がアルボリーノを抜いて優勝できれば逆転タイトルという構図になります。
前回もアルボリーノとのマッチレースでああなったので、ちょっとイヤな感じはしましたが、今回はどちらかというと3位のアコスタと激しいバトルになりました。その間にアルボリーノは離れるし、アコスタはガンガン来るし……というところで、小椋がスリップダウンの転倒……
この瞬間2022年のMoto2チャンピオンが、フェルナンデスに決まりました。
やはり、「勝つしかない」という状況でしたから、さすがの小椋でもこうなってしまうのですね。この2戦ははっきり言ってもったいなかったとは思いますが、勝ちにこだわって限界まで攻めるマインドというのが、将来「MotoGPに参戦する」だけではなく、「MotoGPでタイトル争いをする日本人」につながることを期待しています。
MotoGP
Moto2に続いてタイトル決定レース。しかしこちらはバグナイアが圧倒的なリードとなります。クアルタラロが優勝しても、バグナイアが14位に入ればチャンピオン獲得ということです。
予選までの状況としては、クアルタラロは5番手前後でまずまず速いけれど優勝するペースは出せておらず、バグナイアはタイトルのプレッシャーからか精彩を欠いて10位前後に位置していました。
スタートではリンスがホールショットを決めてトップへ。ポールポジションのマルティン、そしてマルケスが続きます。クアルタラロはいいスタートを決めましたが、ミラーとやりあっているうちにバグナイアに追いつかれ、接触などもあるうちに順位が安定した時にはトップグループに1.5秒ほどの差をつけられた単独5位と、苦しい展開になります。
バグナイアは転倒を恐れてかペースが上がらず、ずるずると順位を下げますが、15位まで下がることはさすがにないだろうという感じでした。
レース中盤から終盤にかけて、マルケス、ミラーがそれぞれ転倒。後方からKTMのビンダーが追い上げ、優勝リンス、2位ビンダー、3位マルティン、4位クアルタラロ、9位バグナイアで、バグナイアの2022年シリーズチャンピオンが決定しました。
シーズン前半に相当ポイントを失ったスロースタートになったものの、中盤の4連勝を含む7勝という勝ち星で怒涛の追い上げ、逆転タイトルでした。シーズン当初からこの展開は予想していましたが、私はクアルタラロの逃げ切りに期待していたのでちょっと残念です。でも7勝もしたらチャンピオンの資格は十分すぎると言えるでしょう。
一方クアルタラロはエンジンが遅いハンデをものともせず、最後まで戦い抜いて素晴らしかったと思います。しかし、直線の少ないバレンシアにおいてすら、コーナーリングスピードを上げるためにワイドな走行ラインを取らないといけないため、バトルが辛そうでした。
それと、クアルタラロは安定して速いようでいて、時々痛いところで不調になってしまうのが気になります。これは2020年に思ったことですが、あの年は大本命マルケスの怪我による離脱によって大混戦になっていましたが、実力的にはドビジオーゾかクアルタラロが本命でした。にもかかわらず取りこぼしまくった結果、いつの間にかミルがタイトルを獲得となってしまいました。
今年は前半戦はかなり粘り強く戦っていたと思うのですが、後半戦になって、追い上げられているからかわかりませんが、ちょっと脆さをのぞかせましたね。例えばタイでの絶不調や、オランダやオーストラリアでの転倒など……メンタル的にはバグナイアよりも強いようにも見えますが、セッティングのせいなのかマシンの特性なのか……性能的なハンデを埋めようと無理をしてしまった結果なのかもしれませんが、ああいった厳しい状況でも、ノーポイントにせずに7位や8位でも積み上げていけるか。そしてライバルもレベルアップした今、高いレベルでのさらなる安定が今後の課題なのかなと思いました。
来シーズンは本調子に戻る(はず)のマルケス、タイトルを取って自信が付いたバグナイア、野心満々のバスティアニーニやマルティンを相手に、より混戦のタイトル争いになっていくと思うので、早くも来年が楽しみになっています!
それとマシンをスイッチするライダーも多いですね。ドゥカティからKTMへ行くミラー、ホンダからKTM出戻りのポル、KTMからアプリリアのオリベイラ、スズキからホンダのミルとリンス、ホンダからドゥカティのアレックス・マルケスなどなど。この後バレンシアテストもさっそくあると思いますが、オリベイラとアレックスには特に注目しています。ホンダに移籍組は…ハマるんじゃないかな~